システム開発者の旬なつぶやき

2025.10.15
制御盤

制御盤配線作業における注意点

制御盤製作における配線作業の実態

制御盤の製作現場では、量産機のように事前にデータが揃っている場合、あらかじめ長さを計測した配線「ハーネス」を使用することで、安定した品質を確保できます。しかし、大型盤や改修・改造を伴う制御盤では、盤内で配線の長さを現物合わせする「原寸合わせ」が必要となるケースが多く存在します。

この作業では、長めに切った電線を盤内に配線し、接続位置で長さを合わせて切断・加工を行うため、直流電源やシーケンサなどの精密機器の近くで圧着加工が実施されることも少なくありません。配線作業は電気工事の中でも特に技能者の経験やセンスが品質を左右する工程であり、見えないリスクへの対策が製作者としての責任となります。

フェルール端子圧着における電線くずのリスク

被覆 圧着
芯線 切断 観戦

配線作業の中で最も電線くずが発生しやすいのが、フェルール端子の圧着工程です。通常の圧着端子では被覆を剥く際に適切な剥き代を確保すれば電線くずは発生しませんが、フェルール端子は構造上、先端の電線を切りそろえる必要があり、盤内で必ず電線くずが出ます。

フェルール端子は専用の圧着工具を使用して端子の導電部に電線を差し込み、先端のパイプ状部分を押しつぶして導体と一体化させる構造です。スプリング式端子台など狭いピッチの端子台に適しており、配線作業の効率化に貢献する一方で、圧着時に発生する微細な電線くずが盤内に散乱するリスクを伴います。

精密機器への電線くず侵入が招く重大トラブル

直流電源(パワーサプライ)やシーケンサなどの精密機器は、熱を発するため通気口を備えた構造となっており、指が入らない程度のカバーやファンで冷却されています。これらの機器は通気口からの異物侵入に対して脆弱で、電線くずなどの導電性物質が侵入すると基板内で短絡(ショート)を起こし、機器破損や最悪の場合は火災につながるリスクがあります。

特に危険なのは、電線くずの落下やこぼれに気づかないまま作業を進めてしまうケースです。このような見えないリスクは通電時にしか発覚せず、発見時には既に機器が破損している可能性が高く、生産ラインの停止や納期遅延など深刻な影響を及ぼします。

確実な品質を守る予防的養生対策

穴あけ作業では徹底した養生により金属切りくずの飛散を防止することが鉄則ですが、配線作業では同様の養生が実施されないことも多く、作業内容に応じた注意が必要です。エアーブローによる清掃で電線くずを除去する方法もありますが、精密機器内部に入り込んだ異物が確実に排出されたかを確認することは困難です。

そのため、高品質な制御盤製作においては「入ったものを取り除く対策」ではなく「入れない対策」が重要となります。配線作業前に部品配置を確認し、リスクが存在すると判断した場合は、精密機器の通気口や隙間をマスキングテープで養生してから作業を開始し、配線作業と清掃が完了するまで養生を維持する予防的アプローチが確実な品質確保につながります。

検査で見えないリスクを事前に対策する責任

制御盤製作では、検査段階では発見できない「見えないリスク」を事前に把握し対策することが、品質・納期・ユーザーの安全を守ることにつながります。作業者の経験や過去のトラブル事例を通じて蓄積されたノウハウは、製作工程における品質管理基準として標準化され、何百ページにも及ぶ作業標準書として現場で活用されています。

東亜エレクトロニクスは、80年を超える業歴で培った制御盤製作の豊富な経験を活かし、配線作業における潜在的なリスクを事前に把握した高品質な制御盤を提供しています。制御盤製作のご相談や品質管理に関する意見交換など、お気軽にお問い合わせください。

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