制御盤の配線作業は、単に電気を繋ぐだけでなく、その後の安定稼働、メンテナンス性、そしてコスト効率に大きく影響する重要な工程です。新入社員の方やこれから配線作業に携わる方にとって、どこから手を付けるべきか迷うのは当然のことでしょう。
本稿では、制御盤の配線作業における基本的な手順と、トラブルを未然に防ぎ、効率的な配線を実現するための重要なポイントについて解説します。
実際の配線作業に入る前に、まず回路図をしっかりと理解することが不可欠です。回路図は、制御盤内の各機器の接続関係を示す設計図であり、これを正確に読み解くことが、スムーズで正確な配線作業の第一歩となります。
また、作業前には使用する工具や部品、電線の種類などを確認し、感電防止のための安全対策を徹底することが重要です。
一般的な制御盤の配線作業は、以下の順序で進めることで、効率的かつトラブルを減らすことができます。(機器の構造や配線都合により多少前後する場合があります)
制御盤の配線において、配線の順番と同様に重要なのが「配線の分離」です。特に交流回路と直流回路は、その特性の違いから、混在配線を行うと様々な問題を引き起こす可能性があります。
交流回路は、電流が流れる際に磁界を発生させ、これがノイズの原因となります。主回路のモーター駆動電源などに使用される交流に対し、直流はセンサーなどの信号線に用いられることが多く、交流ノイズの影響を受けると誤作動や機器の破損につながる恐れがあります。
そのため、交流線と直流線は、可能な限り分けて配線することが基本です。結束バンドで一緒に束ねることは避け、以下のいずれかの方法で分離を行います。
一般的に、制御盤内では交流線の方が少ないことが多いため、ダクト内で分離する場合は、交流回路をダクトの下側に配線すると、配線量の多い直流回路の変更作業が上面で行いやすくなるというメリットもあります。
通信ケーブルについても、ノイズ対策として他の動力線や制御線からできるだけ離して配線することが望ましいです。ダクトに入れる場合は、最後に配線することで埋もれにくく、ノイズの影響を軽減できます。
配線作業が完了したら、必ず回路図と照らし合わせながら、テスターなどで電線間の導通確認を行います。これにより、配線ミスや断線がないかを確認できます。
また、端子台などのネジが緩んでいないかを確認し、必要に応じて増し締めを行うことで、接触不良によるトラブルを未然に防ぎます。
制御盤の配線作業は、一つ一つの手順に理由と根拠があります。今回ご紹介した基本的な手順と配線分離の原則を理解し、実践することで、見た目にも美しく、機能的で信頼性の高い制御盤を製作することができます。
経験豊富な技術者の方も、改めて基本を見直す機会として、またこれから配線作業に携わる方は、本稿を参考に、安全で確実な配線作業を心がけていただければ幸いです。