基礎知識集

生産システム設計

トレーサビリティシステムで実現する高精度なAGV運用と工場管理の最適化

デジタルピッキングシステム

製造業の自動化が加速する中、無人搬送車(AGV)の導入と同時にトレーサビリティシステムの重要性が高まっています。AGVのコースレイアウトにおける墨出し作業の精度が、トレーサビリティと連動した搬送管理の成否を左右する重要な要素となっており、製造現場全体の品質管理と生産効率に直結しています。

AGV運用におけるトレーサビリティシステムの役割

トレーサビリティシステムは、製品の原材料調達から製造、流通、販売に至るまでの各段階を記録し、追跡可能な状態にする仕組みです。AGVと連動したトレーサビリティシステムでは、搬送対象物に個別ID(RFID、バーコードなど)を付与することで、どの製品がいつ、どのルートで搬送されたかをリアルタイムで把握できます。これにより製造工程の見える化が実現し、進捗状況や在庫状況を正確に管理することが可能になります。

AMRと検査装置をRFIDで連携させた事例では、搬送とトレーサビリティを同時に実現し、全体工数を30%削減することに成功しています。このように、AGV運用とトレーサビリティシステムの統合は、単なる搬送の自動化を超えて、製造現場全体の最適化に貢献します。

AGVコースレイアウトにおける墨出し精度の重要性

AGVのコースレイアウトを決める際の墨出し作業は、失敗や間違いが許されない責任重大な工程です。コースレイアウト図は通常、磁気テープの芯(中心線)で設計されていますが、実際の施工では磁気テープの幅を考慮しなければなりません。図面通りに芯墨(シンズミ)で墨出しをしてしまうと、磁気テープを貼った際に墨が隠れてしまい、また芯墨から左右どちらかにテープを貼ると、磁気テープ1枚分ずれることになります。

広い施工エリアで複数の作業者がそれぞれの場所で反対方向にテープを貼り付けてしまうと、最後に合わせた際に互いにテープ幅分ずつずれる事態が発生します。そこで、図面ではテープ芯で記載されていても、実際の生産現場ではテープ幅分ずらした面墨(ツラズミ)で墨出しする必要があります。

面墨による施工と統一ルールの徹底

面墨で墨出しを行う場合も、磁気テープを墨線の左右どちら側に貼るのかを明確に印をつけることが不可欠です。印については特に規定はありませんが、AGV導入に関わる作業者全員が理解できるように統一しておくことで、間違いの発生を防ぐことができます。事前に関係者全員で墨出しのルールやテープの貼り付け方向について統一した認識を持つことが、正確なコース設定とその後の安定運用に直結します。

磁気テープ誘導方式は、床が平坦で段差が少なく、ルートが固定されている現場において最も効率的かつ安定した導入が可能です。ただし、粉塵や油分が多い床では定期清掃が必要となり、滑りやすいと走行精度が低下する可能性があるため、床素材や清掃体制の確認が重要です。

トレーサビリティシステムによる品質管理の強化

トレーサビリティシステムの導入により、各工程のデータをリアルタイムで記録・追跡できるため、どの工程でどのような作業が行われたのか、いつ誰が関与したのかなど詳細な履歴情報の取得が可能となります。万が一トラブルが発生した際にも、迅速に原因を特定し的確な対応がとれるため、業務の透明性と信頼性が高まります。

製造プロセスの全工程が可視化されることで、潜在的な品質リスクを事前に特定し改善することが可能です。特定のロットや製造ラインで品質のばらつきが発生している場合、そのパターンを早期に発見し対策を講じることができ、不良品の発生率を低減し製品の全体的な品質を向上させることができます。

在庫管理の一元化と生産効率の向上

トレーサビリティシステムでは、製品や部品ごとの流通状況やロット情報を一元的に管理できるため、在庫の過不足をリアルタイムで把握可能です。複数の拠点や工程にまたがる在庫管理も容易になり、無駄な在庫の削減や欠品・重複発注の防止につながります。また、需要予測や生産計画の精度も向上し、効率的な物流体制の構築に貢献します。

AGV稼働モニターと連携したトレーサビリティシステムでは、搬送経路の区間ごとにマークを設置し、AGVがその区間を通過するごとにPLCへ在籍位置を送信することで、リアルタイムで位置監視が可能となります。これにより、AGVが経路途中で停止した場合でも、管理室の大型モニターで搬送経路とAGVの現在位置、区間ごとのサイクルタイムや異常表示を一目で確認でき、迅速な対応が可能です。

チェーントレーサビリティによるサプライチェーン全体の最適化

製造業で導入されるトレーサビリティには、主にチェーントレーサビリティと内部トレーサビリティの2種類があります。チェーントレーサビリティは、サプライチェーンを構成する複数の事業者をまたいで製品の流れを記録・追跡する仕組みであり、自社工場に加えて調達・流通・販売といった一連のプロセスを管理することでサプライチェーンの透明性を確保できます。

流通・販売状況を踏まえた適切なリードタイムの設定、受注予測に基づいた生産計画の策定、品質不良やリコール発生時における責任所在の明確化、サプライチェーンの最適化による調達・製造コストの削減など、チェーントレーサビリティは製造業の経営効率向上に多面的に貢献します。

東亜エレクトロニクスによるAGV/AMRシステム導入支援

東亜エレクトロニクスでは、AGV/AMR稼働モニターを活用した搬送ラインの最適化や停止リスクの低減を実現するAGV/AMRシステムの導入実績が豊富です。AGV/AMRの選定から設計・施工・立ち上げ支援まで一貫対応し、工場内の自動搬送トラブル対策やライン停止防止に貢献してきた実績を多数有しています。

長年にわたる無人搬送車を活用した自動搬送システムのノウハウを活かし、生産ラインに最適なソリューションを提案しています。稼働モニターと連携したリアルタイム位置監視により、複数台のAGV/AMRの同時制御や搬送効率の最大化も実現可能です。AGV/AMRの新規導入や既存ラインのアップグレード、自律走行型ロボット(AMR)への切り替えをご検討中の企業様は、AGV導入トラブル防止や無線LANによる位置管理システムの構築も含め、お客様の課題に応じた最適な提案を行います。

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