製造業において品質保証や不具合発生時の原因究明を確実に行うためには、部品や製品の履歴を追跡できるトレーサビリティの確保が不可欠です。特に自動車部品や医薬品、食品製造など規制の厳しい業界では、トレーサビリティシステムの構築が法令順守の観点からも必須要件となっています。
グローバルサプライチェーンの複雑化により、部品調達から製造、出荷に至る各工程で発生する情報を一元管理する必要性が高まっています。品質問題が発生した際に、どの工程でどの部品が使用され、どのような作業が実施されたかを迅速に特定できなければ、影響範囲の把握に時間を要し、リコールコストや信頼失墜のリスクが拡大します。
また、製品安全に関する法規制の強化や、顧客からの品質トレース要求の高度化により、単なる記録の保管だけでなく、リアルタイムで履歴を照会し分析できる仕組みが求められています。MES（製造実行システム）と連動したトレーサビリティ管理により、混流生産における個体管理や、ロット単位での追跡精度向上が実現可能になります。
トレーサビリティシステムの実装には、個体識別技術と情報管理基盤の両面からのアプローチが必要です。搬送対象物にはRFIDタグや二次元バーコードなどの個別IDを付与し、工程通過時や搬送時に自動読取することで作業記録を蓄積します。
AGVやAMRといった自動搬送システムと連携することで、搬送経路や搬送時刻、搬送元・搬送先の情報を自動的に記録でき、人手を介さない確実なデータ収集が可能になります。特にAMRは自律走行機能により、レイアウト変更にも柔軟に対応しながらトレーサビリティデータの収集を継続できるため、多品種少量生産環境でも有効です。
トレーサビリティの信頼性を担保するには、データ欠損や記録ミスを防ぐ仕組みが重要です。制御盤やPLCと搬送システムを統合し、工程ごとの通過情報を確実に記録することで、製造記録との整合性を保ち監査対応にも耐えうる品質保証体制を構築できます。
複数台の搬送ロボットを運用する場合は、フリート制御システムによる中央管理が有効で、各機体の稼働状況や搬送履歴をリアルタイムに監視しながら最適な機体割り当てを行えます。これにより、トレーサビリティデータの収集効率と正確性が向上し、生産スケジュールとの連動も実現します。
トレーサビリティシステムは一度構築すれば完成ではなく、生産品目の増加や新規製造ラインの追加に応じて拡張が必要になります。初期設計の段階で、上位システムとのインターフェース仕様や、データフォーマットの標準化を考慮しておくことが、長期的な運用コスト削減に繋がります。
セキュリティと無人化を両立させる観点では、夜間の無人搬送時にもトレーサビリティデータを確実に記録し、高価値品の搬送履歴を追跡できる体制が求められます。システム全体の設計思想として、現場の実態に即した技術選定と、将来の拡張を見据えた柔軟性の確保が重要です。
東亜エレクトロニクスは、長年にわたりFAシステム設計と制御盤製作の実績を積み重ねてきました。トレーサビリティシステムの構築においても、RFID・バーコード読取装置との統合から、AGV・AMRによる自動搬送システムとの連携、上位MESとのデータ連動まで一貫して対応いたします。製造現場の品質保証体制強化や監査対応を支援するトレーサビリティソリューションのご相談は、ぜひ東亜エレクトロニクスへお任せください。
