AGV（無人搬送車）やAMR（自律走行搬送ロボット）は、製造・物流現場の省人化における切り札です。しかし、「導入したが想定通りに稼働しない」「頻繁に停止して逆に手間が増えた」という失敗事例も少なくありません。本記事では、AGV導入時によく直面する「環境」「システム連携」「運用」の3つの課題を深掘りし、現場負担を最小限に抑えつつ自動化を成功させるための実践的な解決策を解説します。
AGV導入における最初の壁は、物理的な走行環境とのミスマッチです。特に従来の「磁気誘導式」を採用した場合、床面の磁気テープ剥離や汚れによる停止トラブルが頻発します。また、フォークリフトや作業者が頻繁に行き交う通路では、AGVの安全センサーが過敏に反応し、渋滞を引き起こすケースもあります。
さらに、近年増加している多品種少量生産の現場では、頻繁なライン変更が求められます。固定ルートしか走行できないAGVでは、レイアウト変更のたびに再工事（テープ貼り直しやマップ再作成）が必要となり、そのコストと工数が導入効果を相殺してしまうという課題があります。現場の「変化」に対し、どの程度柔軟に対応できるハードウェアを選ぶかが重要です。
多くの導入プロジェクトで盲点となるのが、AGVと既存設備との「信号連携（ハンドシェイク）」の課題です。AGV自体が高性能でも、移載機、自動ドア、エレベーター、防火シャッターなどがスムーズに連動しなければ、搬送は完結しません。
例えば、「AGVが到着してもコンベアが動かない」「エレベーターの扉が開く前にAGVが発進しようとする」といったトラブルは、PLC（プログラマブルロジックコントローラ）間の通信設計ミスや、タイミング調整不足が原因です。また、Wi-Fi環境が不安定な現場では、上位システム（WMS/MES）からの指示が届かず、AGVが立ち往生する「通信の死角」問題も発生します。これらはハードウェア単体の問題ではなく、システム全体のインテグレーション不足に起因します。
導入後の運用フェーズにおいても、予期せぬ課題が浮上します。バッテリー管理の不徹底による稼働率低下や、トラブル発生時に「誰が直すのか（機械メーカーか、システム担当か）」という責任分界点の曖昧さが、復旧時間を長引かせる要因となります。
また、グローバル企業においては、国内で成功したラインを海外工場へ展開する際に、現地規格（UL規格やCEマーキング）や指定部品（Allen-BradleyやBeckhoffなど）への非対応が障壁となるケースが増えています。特定のメーカー仕様に依存しすぎたシステム（ベンダーロックイン）は、将来的な拡張や海外展開時の足かせとなりかねません。長期的な視点で、保守性と拡張性を担保したシステム設計が求められます。
これらの課題を解決するためには、AGVを単なる「搬送機器」としてではなく、工場全体のネットワークの一部として捉える視点が必要です。最新のSLAM技術やAIによる群制御は、環境変化への対応力を高めますが、それを使いこなすには高度な制御技術が不可欠です。
成功の鍵は、車両の選定だけでなく、既存ラインの改造、制御盤の製作、ネットワーク構築、そして上位システムとの連携までを一貫して任せられるパートナーを選ぶことです。「部分最適」ではなく「全体最適」の視点で設計されたシステムこそが、真の省人化を実現します。
東亜エレクトロニクスは、FAシステムの設計から制御盤製作、電気工事までをワンストップで提供する「技術商社」です。
「AGVと設備が連携しない」「海外工場へ展開したいが規格対応が不安」といったお客様の課題に対し、メーカーにとらわれない最適な機器選定と、確かなエンジニアリング力で応えます。特にAllen-BradleyやBeckhoffなどの海外制御機器を用いたシステム構築や、既存ラインとの複雑な信号連携を得意としています。導入前のコンサルティングから運用保守まで、AGV導入のあらゆるフェーズをサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。
