
製造現場や物流施設における自動搬送技術は、長年にわたるセンシング技術の進化によって支えられています。AGVの走行精度や安全性は、どのようなセンシング方式を採用するかで大きく左右されるため、技術の変遷を理解することが適切なシステム選定に繋がります。
1950年代から導入が始まったAGVは、電磁誘導式と磁気誘導式という二つの経路誘導方式が主流でした。電磁誘導式は床に埋設した誘導線に電流を流し、発生する磁界を検出して走行する仕組みで、設備工事が必要であり設置後のルート変更には大きなコストがかかるという課題がありました。
一方、磁気誘導式は床面に磁気テープを貼り付け、センサーで磁気を読み取りながら走行するため、比較的容易にコース設計が可能でレイアウト変更にも柔軟に対応できるメリットがあります。ただし、磁気テープの劣化や剥離といった物理的な問題が発生するため、定期的なメンテナンスが欠かせません。これらの経路誘導方式は決められたルート上を確実に走行する用途には適していますが、生産ラインの頻繁な変更や多品種少量生産には対応しにくいという限界があります。
2000年代に入ると、画像認識方式とレーザー誘導式という新たなセンシング技術が実用化されました。画像認識方式は天井や床に設置したQRコードなどのマーカーをカメラで読み取りながら自己位置を推定する仕組みで、AI技術の進歩により高精度な位置制御が可能になっています。
レーザー誘導式は壁や柱に設置した反射板にレーザー光を照射し、その反射を解析することで自己位置を特定します。磁気テープのような床面への施工が不要である反面、走行範囲に応じて一定数の反射板を設置する必要があり、広範囲での運用時には設置コストが課題となります。
さらに、SLAM(自己位置推定と地図作成)技術を用いた自律走行方式では、誘導体の設置が一切不要となりました。LiDARセンサーやカメラで周囲環境をリアルタイムにマッピングし、自律的に最適経路を判断しながら目的地まで移動できるため、障害物回避や動的な環境変化への対応が可能です。この技術により、人との協働作業が求められる現場や、レイアウト変更が頻繁に発生する製造ラインでも柔軟に運用できるようになりました。
センシング技術の選択は、導入コストだけでなく運用時の柔軟性や保守性も含めた総合的な判断が求められます。固定ルートで長距離搬送を行う場合は磁気誘導式や電磁誘導式が低コストで確実性が高い一方、レイアウト変更が多い環境や人の往来が激しい現場では自律走行式が運用効率の向上に寄与します。
また、複数台のAGVを同時制御する場合は、クラウド型の運行管理システムと連携できる自律走行式が有利で、各車両の位置情報や稼働状況をリアルタイムに把握し効率的な配車が可能です。さらに、高解像度センサーを搭載した最新のAGVでは市販の安価なテープでも高精度な走行が実現できるため、運用コストの削減に繋がります。
AI技術やセンサー性能の向上により、AGVの自律性と安全性は今後さらに高度化していきます。障害物検知の精度向上や、周辺設備との連携強化により、搬送作業だけでなく前後工程を含めた一貫自動化が実現しつつあります。センシング技術の特性を正しく理解し、自社の生産体制や将来的な拡張性を見据えた技術選定を行うことが、持続的な競争力強化に繋がります。
東亜エレクトロニクスでは、長年にわたるFAシステム設計と制御盤製作の実績をもとに、AGV・AMRの導入から運用まで一貫したサポートを提供しています。電磁誘導式や磁気誘導式といった従来型から、SLAM技術を活用した最新の自律走行システムまで、お客様の現場環境や搬送要件に最適なセンシング技術をご提案いたします。システム設計から制御盤製作、稼働モニタリングシステムの構築まで、製造現場の自動化を総合的に支援いたしますので、AGV・AMR導入をご検討の際はぜひご相談ください。